羊水の味

この曲を聞くとあれを思い出すということがある。第三の男のテーマを聞けばビールを思い出すし、ビタースウィートサンバを聞けば深夜ラジオを思い出すし、イッツマイライフを聞けば筋肉芸人を思い出す。そしてこの弦楽のためのアダージョを聞けば葬式を思い出す。

フィルムの下の世界

「すみません。今日は傘を差したままでの勤務をお願いします」
「何かありましたか」
僕はビルを見上げたくなる気持ちを抑えて警備員に尋ねる。
「フィルムの出荷が間に合わなかったようで張替が終わってないのです」

シンガー・ソングライター

小さな軽自動車が唸りながら加速していく。正面にはどこまでも続いてる真っ直ぐな道路が、左右には田んぼと一定の感覚で配置された街灯がある。4車線ある大きな道路で昼間ならもっと交通量があるのだろうが今は僕たちの車だけだ。