文章&音楽
羊水に戻る
都内から車で三時間もかかるここまでやって来たのは、羊水のなかにもどるためだった。…
アフリカ
駅ビル構内の人工的な光が、チェーンのカフェのカウンター席にまばらに座る人影を明るく照らした。…
トライ・ライノセラス0724385068324購入記
午前二時、宿直室にいた男のスマートフォンが鳴った。…
ヘヴン・スポンサード・バイ・バーガーキング
一切の色彩が失われるというのは、必ずしもグレイスケールの世界を意味しない。…
傘はいつでも差しておくように
浅いところには庶民が住む。深いところには金持ちが住む。…
ゾロゾロついてきてっけどさあ
恥ずかしさがわたしの後ろをゾロゾロついて回る。…
骨折
表へ出ると、広い通りがまっすぐに家の前を通っていた。…
ポストシーズン、花火
小説を書いている、と胸を張って言えたためしなど一度もない。…
ハネムーン
その人は本当に元気な人だった。夏になるとよく原色のTシャツを着た。黄色や水色の布地が真っ白な肌によく映えた。僕の知らないバンドのTシャツを夏になるたびにたくさん買うのだ。…
ヤー!
夏の夕焼けに、染まった雲がV字にかかっている。それはギブソン・フライングV。オレンジ色の変形ギター。…
パンダのタトゥー
パンダのタトゥーを彫ったあいつに会いに、俺は中央線に乗る。…
ある芸術家の逆行
カフカはその遺志に逆らって作品をいくつも公開されたといいます。その時、作品は初めて作者の意思を離れて世に届き、初めて芸術となったのです。作者の自意識と切り離されない限り、芸術は芸術たり得ません。その意…
18歳
18歳に戻ってから二週間が経とうとしていた。二度目ともなると、生活は比較的容易だった。…
漣のリズム
「飯、連れてってもらえませんか」と声をかけられた。「はい?」「もしよかったら飯、連れてってください」青年はもう一度言った。…
Twenteenage Wasteland
シェアハウスの解散、最近まで一緒に暮らした友人達について。思い出をしまっておくためだけの短い小説…
カロリーメイト
さて 俺がカロリーメイトを主食と定めてから 定めた覚えはないが 俺のワンルームを訪れた人間が三人いる…
アスパラガス
「そうなんですか。分かってる顔で喋るから、あなたには全部分かってるのかと思いました」…
Good Scent Hunting
懐かしい曲を聴いた時に特定の匂いを感じることがある。…
鈴虫を飼う
「私」と彼女が言った。「鈴虫だったの」 「鈴虫?」 「ちょっと前までね」…
強制退去
その男にとって、生活と都市環境は同じものを指すのであった。都市の整備は生活の変化そのものだった。川底の岩がすべて綺麗に裏返され、平らに均され、全てが白日の下に置かれようとしていた。高いところから覗き込…
圏外、電池残量なし
「何年もかかるでしょうね。この小さい鉢植えが」と女性が言った。「そんなに大きくなっていくことを想像したら、楽しくないですか」 「僕は寂しいと思ってしまいました」 「え、どういうことですか」 「なんか、…
東京オリンピック、NHKの解説が解説でなくなるとき
「惜しい惜しい!さあここだぞー、勝負どころ!いいぞー来たー!!!」…
サマーソルト
「『サマーソルト』言うてくれたら、必殺技決める前の仮面ライダーみたいに、空中で一回転させたるわ。そしたら斜めに落ちていくから、ええ着地場所見つけや」…
Hello World!
新規のページに表示される、お決まりの”Hello, World!”の文字を見ただけで、どれだけ嬉しかったことか。…
空間的広がりから見た昼夜逆転の秘訣
キラーン ポチャ♪ ドドドドドドドドドド フォーン…
SNS上で殺気立ってどうする?
今回の状況を"普段通りか自粛か" "経済か人命か" "呑気な日本か深刻な海外か"という観点で捉えることができるのは、僕たちがそれを許される立場にいるからにすぎない。…
宗教としての経済学・人間の二種類の壊れ方
学時代の専攻であった経済学は、その特性からあるシステムに対する距離感のバランスをとることの重要性を教えてくれ、結果として生き方についてのヒントをくれたように感じることがある。…
フィクションの効用について(プラトンはNetflixを薦めるか?)
年末久しぶりに実家に帰ったときに、本棚にプラトンの『国家』があったので読んでみた。…
1/2なのかそうじゃないのか?
昨日『Marginal Revolution』の『二人の子供問題』の記事の和訳があがってきていた。ちょっと問題。…
ルカ・モドリッチ、名は体を表す?
ワールドカップのMVPがクロアチア代表のモドリッチに決まったようだ。…