沼熊

文章&音楽

アフリカ

駅ビル構内の人工的な光が、チェーンのカフェのカウンター席にまばらに座る人影を明るく照らした。

ハネムーン

その人は本当に元気な人だった。夏になるとよく原色のTシャツを着た。黄色や水色の布地が真っ白な肌によく映えた。僕の知らないバンドのTシャツを夏になるたびにたくさん買うのだ。

ヤー!

夏の夕焼けに、染まった雲がV字にかかっている。それはギブソン・フライングV。オレンジ色の変形ギター。

ある芸術家の逆行

カフカはその遺志に逆らって作品をいくつも公開されたといいます。その時、作品は初めて作者の意思を離れて世に届き、初めて芸術となったのです。作者の自意識と切り離されない限り、芸術は芸術たり得ません。その意

18歳

18歳に戻ってから二週間が経とうとしていた。二度目ともなると、生活は比較的容易だった。

漣のリズム

「飯、連れてってもらえませんか」と声をかけられた。「はい?」「もしよかったら飯、連れてってください」青年はもう一度言った。

強制退去

その男にとって、生活と都市環境は同じものを指すのであった。都市の整備は生活の変化そのものだった。川底の岩がすべて綺麗に裏返され、平らに均され、全てが白日の下に置かれようとしていた。高いところから覗き込

圏外、電池残量なし

「何年もかかるでしょうね。この小さい鉢植えが」と女性が言った。「そんなに大きくなっていくことを想像したら、楽しくないですか」 「僕は寂しいと思ってしまいました」 「え、どういうことですか」 「なんか、

サマーソルト

「『サマーソルト』言うてくれたら、必殺技決める前の仮面ライダーみたいに、空中で一回転させたるわ。そしたら斜めに落ちていくから、ええ着地場所見つけや」

Hello World!

新規のページに表示される、お決まりの”Hello, World!”の文字を見ただけで、どれだけ嬉しかったことか。