天国
眠るのにも起きているのにも中途半端な時間だった。…
アフリカ
駅ビル構内の人工的な光が、チェーンのカフェのカウンター席にまばらに座る人影を明るく照らした。…
トライ・ライノセラス0724385068324購入記
午前二時、宿直室にいた男のスマートフォンが鳴った。…
俺には関係ないんやけどさ
本日はお忙しいところお時間を取ってくださいましてありがとうございます。…
プロムナード
マクドナルドでドライブスルーをすることになったのは隣に座っているキョウコの提案だった。…
ヘヴン・スポンサード・バイ・バーガーキング
一切の色彩が失われるというのは、必ずしもグレイスケールの世界を意味しない。…
傘はいつでも差しておくように
浅いところには庶民が住む。深いところには金持ちが住む。…
フィルムの下の世界
「すみません。今日は傘を差したままでの勤務をお願いします」 「何かありましたか」 僕はビルを見上げたくなる気持ちを抑えて警備員に尋ねる。 「フィルムの出荷が間に合わなかったようで張替が終わってないので…
ゾロゾロついてきてっけどさあ
恥ずかしさがわたしの後ろをゾロゾロついて回る。…
南の島のハメハメハ
南の島に風が吹く。ハメハメハ大王が歌を歌ったのだ。南の空には星が瞬いている。またハメハメハ大王が新たな夢をみたのだ。…
骨折
表へ出ると、広い通りがまっすぐに家の前を通っていた。…
ポストシーズン
目覚めと共に夏の終わりはペンキを剥がすように起こった。…
じーさんばーさんに食わしてもろてます
人生ポストシーズンだよなと思う。…
ポストシーズン、花火
小説を書いている、と胸を張って言えたためしなど一度もない。…
シンガー・ソングライター
小さな軽自動車が唸りながら加速していく。正面にはどこまでも続いてる真っ直ぐな道路が、左右には田んぼと一定の感覚で配置された街灯がある。4車線ある大きな道路で昼間ならもっと交通量があるのだろうが今は僕た…
ハネムーン
その人は本当に元気な人だった。夏になるとよく原色のTシャツを着た。黄色や水色の布地が真っ白な肌によく映えた。僕の知らないバンドのTシャツを夏になるたびにたくさん買うのだ。…
普通の恋愛
32度。まだ6月だというのに馬鹿みたいな暑さで支配された街の、あんまりエアコンが効いていない喫茶店のせいで、960円も出して注文したアイスカフェラテの氷は跡形もなく液体に溶けている。…
人生史上最高に忙しい夜
今夜は僕にとって人生史上最高に忙しい夜だと言っても過言ではない。…
ヤー!
夏の夕焼けに、染まった雲がV字にかかっている。それはギブソン・フライングV。オレンジ色の変形ギター。…
2022年第24回大しりとり大会(府中支部)におけるパンダ=シロクマ論争の記録
その日はA氏とB氏(両名の名誉のために実名は伏せさせていただく)におけるしりとりは白熱し大いに盛り上がった。…
パンダのタトゥー
パンダのタトゥーを彫ったあいつに会いに、俺は中央線に乗る。…
The Upside Down
東の空がサクレのレモンアイス色になっている。僕以外は特に可笑しいとも思わないらしくそのまま歩き続けている。道端に落ちているゴミが僕の名前を呼ぶ。囲んでいるビルもリズミカルに体を揺らしながら名前を呼んで…
天使の遊ぶところ
パチンコ屋の前に座り込んで1ミリの煙草を吸っていたアヤネの爪には彼氏の成人式のために大金を払って塗ったネイルが残ったままだった…
ある芸術家の逆行
カフカはその遺志に逆らって作品をいくつも公開されたといいます。その時、作品は初めて作者の意思を離れて世に届き、初めて芸術となったのです。作者の自意識と切り離されない限り、芸術は芸術たり得ません。その意…
昼のような夜、夜のような影
紙飛行機は、教室の中で空気を裂きながら飛ぶ。両翼は空調から流れる冷風をはらんで、生徒たちの頭上を滑空していた。…
消臭しとけ金柑の香り
海と山の間の狭い土地に田んぼがぎゅうぎゅうに詰まっている。変わらないなと電車に揺られながら思う。…
18歳
18歳に戻ってから二週間が経とうとしていた。二度目ともなると、生活は比較的容易だった。…
漣のリズム
「飯、連れてってもらえませんか」と声をかけられた。「はい?」「もしよかったら飯、連れてってください」青年はもう一度言った。…
Twenteenage Wasteland
シェアハウスの解散、最近まで一緒に暮らした友人達について。思い出をしまっておくためだけの短い小説…
Tie a Yellow Ribbon Round
俺の刑期は5000年だ。結局、宇宙の探索は満足にできなかった。何万光年と離れたところまでいかないと学術的に価値のある情報は得ることはできない。放出された方向もすでに念入りに探索が行われたところであっ…